
人が亡くなったとき、その人(被相続人)の遺した財産を親族等「相続人」に引き継ぐ手続きを「相続」といいます。相続は、人が亡くなった後に自動的に行われるものではなく、相続人が種々の手続きを行うことによって確定されます。
行政書士は相続に関する業務を請け負い、各手続きを行うことができます。
1、遺言の有無の確認
亡くなった方が生前に遺言を残していたかどうかを確認します。遺言は大きく公正証書遺言と自筆証書遺言の2種類があり、確認方法がそれぞれ異なります。
・公正証書遺言の場合は、公証役場にて遺言の有無を確認できます。
・自筆証書遺言の場合は、法務局に保管されている場合と家の中に保管してある場合があります。故人の住んでいた
家などに遺言書のようなものがないか探してみましょう。
(ただし、遺言書を見つけても勝手に開封してはいけません。開封前に裁判所にて検認という手続きが
必要になり、検認前に開封してしまうと遺言が無効になってしまう可能性があります)
2、相続人の特定
遺言によって特別の受遺者等がいない場合は、法定相続人となる人を推定します。
法定相続人の特定には、故人が生まれた時から亡くなった時までの戸籍をすべて確認します。引越し等で本籍地を変え、地方の戸籍謄本を収集するには時間と手間がかかることもあります。
揃った戸籍謄本を確認し故人の家族関係を明らかにし、法定相続人を特定します。
【第1順位】配偶者+子
【第2順位】配偶者+直系尊属
【第3順位】配偶者+兄弟姉妹 ※代襲相続などがある場合があります。
法定相続人を特定できたら、法務局で法定相続情報一覧図を作成します。この書類を作成すると、その後の相続手続きがスムーズに行えます。
3、相続財産の特定
相続人の特定と同時に、相続財産も特定します。
相続手続きが必要な財産は主に「不動産」「預貯金」「株式等証券」「自動車」などです。さらに「出資金」「借金等債務」も遺されている場合があります。
また、近年では故人のパソコン内のデータ等の扱いが問題となることもあり、相続手続きを開始する前にどんな財産が遺されているかをしっかりと把握することが大切になってきています。
4、遺産分割協議
故人の相続財産について、相続人の間で「誰が」「何を」「どのように」相続するかを話し合います。
法律で決まっている割合(法定相続分)によって決めたり、誰か一人にすべての財産を相続したり、相続人で均等に分割したり、話し合いの内容は自由です。
ここでの合意を書面にまとめ、相続人全員の署名と実印を押印したものが「遺産分割協議書」となります。
5、相続手続書類の作成
相続手続きに必要な書類は、遺言の有無・法定相続人の態様・相続財産の態様によって変わります。
前項で作成した「遺産分割協議書」を基本に、各種手続きに必要な書類があります。
相続手続きは財産の所有権の移転が伴うので、銀行なども慎重に書類を判断します。
どのような手続きのために、どのような書類が必要かを把握し、丁寧に作成することが必要です。
6、各種手続き
具体的な手続きを行います。それぞれの窓口に作成した書類を提出して手続きを依頼します。
相続人本人でなく、代理人に書類提出等を依頼する場合、委任状が必要となります。
【預貯金】
・各銀行での手続き
・残高金額を相続人へ移譲
【不動産】
・名義変更手続き
・登記内容の変更
※法務局への各種登記申請は司法書士の業務です
【車】
・名義変更手続き
・移転登録
【株式】
・株式譲渡手続き
・各証券会社での手続き
【事業】
・事業承継手続き
・清算手続き
7、相続税の支払い
相続財産の価額が一定額を超え相続税がかかる場合は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に相続人によって申告します。※相続税の計算、代理申告は税理士の業務です